ネタバレ含むので注意してください。
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おおむね漫画作品については原作党である。
そもそも31巻分のドラマを2時間に…というのは無理だし、どこか切り取れば映画単体として成立しにくい。何をどうしたのか、観たいなと思いつつ忙しさにまぎれて機会を逃し、けど皆観てるし評判もいいのでNetflixに来てようやく観た。
結果、やはり初見さんは厳しいのでは……と私は思ったのだけど、映画ドットコムの感想を読んでいたら、「ミリしらで観ましたがよかったです! 原作では花道くんが主人公なのですね😊」との感想がちょこちょこあって、やっぱお客さんてすげえなと。
思いのほか「アートフィルムだな!?」との感想を持った。単館系というか。昔、始発待ちの吉祥寺でジム・ジャームッシュを観たのだけど、ああいう時間を思い出した。自分一人でぼんやり受け取る感じ。
これがたまらなく「漫画だ」と思う。漫画を複数人で一緒に読むことはない。
スラムダンクというビッグタイトルの期待値で、そのパーソナルさが許されたのかというと、映画ドットコムにも「あんなのは同人誌だ、個人制作だ」との感想が少々あり、私もそれは言いたいことわかるのである。
しかし、実写ならまだしも、関係者の多いアニメでここまでハイクオリティな”個人制作”が完成したのは、それ自体が財産で、なかなかない立ち位置ではないかという気がする。
始まって数分で奇妙な感覚につつまれ、「この感じはなんだ!?」と、自分のなかを探ったら、驚くべきことに”ジブリ”であった。何を言ってるんだという話だろうけど。
具体的にどこというわけではない。キャラクターデザインから脚本、作画、動きに至るまで巡らされた、作家性の濃度というか。自分の観たかぎりで他のアニメ監督も脳内検索したけれど、どうも”ジブリ”だと感じた。
鑑賞後に横顔情報を得ようと検索していたら、まさに井上先生が宮崎駿監督のドキュメンタリーに触発されて……との話が出てきて、オッと。けどまあ、あれは絵を描いてたらだいたい観るので……アニメやってたらなおさらだろうと思う。
背景美術が美しかったな。
沖縄の感じとか、少ししかないが秋田の様子もよかった。沖縄の植生と秋田の植生はぜったいに違う。秋田に回想が移ったとき、「それな!」となった。林立する幹の太い杉(?)と、湿気というか。秋田現地の方はどう感じるかわからないが、少なくともわが故郷、新潟には似た場所がある。日本海側雪国だなと背景美術で移動がわかるのはたまらなく美しい。
海の風景は「スラムダンクらしい」と思うけど、案外、山の印象がないのじゃないか。
主人公を、花道から宮城リョータに、あそこまでシフトするなら、相手方の沢北ももっと観たかった感じがする。山のスラムダンクがあっても良い。